「今」という時代の空気感
ヒット商品応援団日記No316(毎週2回更新) 2008.11.12.
2008年度の新語・流行語大賞候補60語の発表があった。(http://singo.jiyu.co.jp/index.html)昨年は「(宮崎を)どげんかせんといかん」と「ハニカミ王子」が大賞であった。同じような意味で、その年の世相漢字の公募があるが、昨年は「偽」であった。食品偽装を始め、年金記録や政治活動費の「偽」が社会問題化し、嘘つきばかりが蔓延している時代を良く表していると思う。そうした時代を「どげんかせんといかん」と誰もが思う、閉塞感が強く出た一年。そうした中にあって、爽やかな風を送ってくれたのが「ハニカミ王子」であった。
流行語大賞も世相漢字も12月にならないと決まらないが、2007年が「偽」が蔓延する閉塞社会であったのに対し、今年は更に「危機」へと進行しているように思われる。流行語大賞候補には「汚染米/事故米」「毒入りギョーザ」「メタミドホス」 「サブプライム」があり、「どげんかせんといかん」という思いは「再発防止検討委員会」どころか「チェンジ(CHANGE)」が求められ始めた、ということであろう。一方、「ハニカミ王子」の流れでは、北京オリンピックソフトボールで金メダルをとった「上野の413球」、 あるいは北島康介選手の「何も言えねー」なんかも選ばれており、ピュア(純粋)コンセプトは時代の通低であると言えよう。
今年の特徴の一つが、やはり政治における出来事や言葉が多くなっている。「ねじれ国会」 「霞ヶ関埋蔵金」「居酒屋タクシー」「(福田前総理による)あなたとは違うんです」といった具合で、政治においても具体的な「危機」が進行していると言えよう。こうした危機的社会では、その裏側ではとりとめのない、単純に笑うしかないようなことが受ける。候補にも入っているが、「キターー!! 」「グ〜! 」「ゆるキャラ」「せんとくん」「おバカキャラ 」「世界のナベアツ」「 ポ〜ニョ、ポニョポニョ、さかなの子〜♪」といった具合である。ある意味、ヴィヴィッドな感性が摩耗してしまった時代を表しているように思える。
ところで、先日筑紫哲也さんが亡くなられた。筑紫さんへのコメントはそれこそ「多事争論」あるが、「ニュースに声を与えた最初の人」であったと発言していたのはコラムニスト天野祐吉さんであった。いままでの無表情な文字の羅列であったニュースに、思いがにじむ、息づかいがわかる「声」を与えた人であったという。「今」という時代の空気感を伝えてきた数少ない一人であった。私は感性が摩耗してしまった時代と書いたが、感性を声と置き直しても意味はかわらない。多事が他事になってしまい、争論されることなく、沈殿しつつあるように思える。そうした意味で、筑紫さんが亡くなられたことは「声」を失いつつある時代の象徴のように思えた。
こうした時代にあって大きなヒット商品、メガ・ヒットは出てこないであろう。もし、あるとすれば今まで無かった新技術や新素材、あるいはそれらを取り入れた新しい仕組みによる商品化ぐらいであろう。例えば、この秋冬でどの程度売れるかわからないが、注目したいのがユニクロの「ヒートテック」である。身体から発散する水蒸気を吸収して発熱し、保温する新素材を使った肌着やタートルネックシャツである。価格も790円〜1500円と買いやすい設定となっている。
内側に向いた安心を求める心理市場にあっては、今は小さなヒットを繰り返すことが賢明なビジネス指針であるといえよう。前回、「Yes we can 物語」というキーワードでオバマ米国について書いた。どの程度の変化となるか未知数ではあるが、日本の場合は「危機」にあるにも関わらず迷走を繰り返し、風はいまなお吹いていない。しかし、以前書いたことがあるが、例えばアニメ映画の宮崎駿監督やサブカルチャーの流れを組む村上隆さんのビジネス、あるいは私の知らないところで黙々と「何か」を創っている無名の人々がビジネスに新しい風を吹き込んでくれると思う。(続く)
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