反語の時代
ヒット商品応援団日記No308(毎週2回更新) 2008.10.16.
日本人4人のノーベル賞受賞に続き、ノーベル経済学賞に米国のポール・クルーグマン教授が選ばれたと報じられた。レーガン政権で経済諮問委員を務め、現在は反ブッシュの代表的な論客であるという。ブッシュが進める新自由主義路線の延長線上に今回の金融危機があり、なんとも皮肉な受賞である。クルーグマンは、米共和党政権が高所得者への減税を拡大する一方で福祉を削減し、格差を広げたと指摘。米国が経常赤字を膨らませながら、世界中のお金を吸い上げて繁栄する構図について、現在の金融危機が深刻化する以前から「世界恐慌前夜に似ている」と警告していた。新自由主義、市場原理という市場のダイナミズムにまかせるという考えは、今回の公的資金の導入によって自ら破綻を宣言したようなものであるが、今回のノーベル経済学賞は更に駄目押しをしたようなものだ。
ところで2009年度のノーベル賞ならぬイグノーベル経済学賞にはリーマンブラザーズ社の会長、いや米国現政権の財務長官ポールソン(元ゴールドマン・サックス社会長)が選ばれるかもしれない。ちなみに、私がヘッジファンドという言葉に接した最初の経済記事が、あのエネルギー商社エンロンの破綻(2001年12月)であった。その翌年のイグノーベル経済学賞を受賞したのがエンロンとその役員達である。
反語といえば今最も反語的存在なのが、ロックミュージシャン、タレントのDAIGO君であろう。あの元首相竹下登氏の孫である。世襲政治家の問題が指摘されるなか、自力でミュージシャンになり、TVに登場するや元首相をじっちゃん呼ばわりし、その存在感を見せた。時代を過激なまでにおちょくったのが、ツービート(タケシ)であったのに対し、存在そのものがおちょくりとなっているのがDAIGO君だ。「元首相の孫」なんてこの程度といってくれている訳である。
反語を批評・批判といっても、皮肉・おちょくりといってもかまわない。本来ジャーナリズムの存在理由の一つであったが、最早その機能を果たしえない存在になっている。そうした中で、DAIGO君の他にも、昨年木村伊兵衛賞を受賞した写真家うめかよ(梅佳代)さんなんかも、時代を痛切に批評していると見えなくもない。おじいちゃんが大好きで、「年をとるってかっこいい」と、「写真をとっていればおじいちゃんは死なない」といって写真を撮るうめかよは、ユーモラスな写真のなかに、今日の高齢社会の問題をするどく切り取っていると思う。
「見えないものを見る」、そこに時代の本質を見出すという反語的世界に生きるのがアーチストだと思うが、一方でそうした表現力を持ちえない人間はどうするかである。言葉にならない言葉、表現できない表現、それは沈黙となるしかない。沈黙を解き放してくれる一つが歌謡曲であったが、前回書いたように歌謡曲は痩せていく。言葉の原初的形態は音であった。悲しくて歌は生まれ、うれしくて歌は生まれ、何かを伝えたくて歌は生まれた。私の場合、そんな野生が残る場所の一つが沖縄であった。反語的とは、過剰情報のなかに沈殿している沈黙、都市が産み出した見えないものから生まれる一つの表現かもしれない。(続く)
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